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昆虫、特に甲虫を中心とした生き物ブログ。ビーチコーミングやガラスびん収集についても書いています。


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ナミビア旅行記(8) 旅の終わり

ナミビア旅行記(7)からの続き。最終回です。
同時進行している丸山さんの旅行記はこちら

2月12日(火)
ツメブを離れ、首都周辺へと戻る日である。今日は一気に500kmほど走る必要があるが、長距離の運転にもすっかり慣れた。景色を楽しむ余裕もできた。

サバンナを走っていると、巨大なシロアリ塚がそこかしこに立っている。特に大きめの塚の前で記念撮影をした。
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ウィントフックに着き、最後の荷造りに必要な物資やビールを買い、次のロッジへ向かう。途中の国道ではところどころで検問があり、別に悪いことはしていないのだが、止められるとどうにも落ち着かない。

着いてみると、とても雰囲気の良いロッジだった。高い天井と、センスの良い調度品。ここではちゃんとした夕食がつき、メインとしてオリックスの肉を焼いて出してくれた。こんなに美味しく栄養のある食事は久々で嬉しい。肉最高。
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虫は終わりにするつもりだったが、外に灯りがあるとつい見に行ってしまう。これは虫屋の性としか言いようがない。ここでは大きなヒゲブトオサムシが飛んできた。捕まえると、プッという破裂音と共にガスを噴射し、手に謎の黄色い粉がつく。そして消毒液のような臭いが染みつき、なかなか取れない。



2月13日(水)
リゾート気分で朝食。名産品のハムやサラミが美味しかった。肉最高。(二回目)
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この手の肉製品は美味しくてお土産にしたいところだが、防疫上の理由で日本には持ち帰れないのが残念である。


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記念撮影をして、手を振って出発…したところ、血相を変えた主人が大声をあげながら車を追いかけてきた。何事かと思ったが、車のトランクを開けっぱなしにして走りだしてしまったのだった。漫画みたいに荷物をポロポロこぼしながら出て行くところだった。てへ。(舌を出す)


今日のロッジにチェックインするまで、街なかでお土産を買うことにした。たくさんの民芸品が並ぶ青空市みたいなところで、木彫りやブリキの鳥を購入。こちらではホロホロチョウが愛されており、さまざまな製品になっている。
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物売りの呼び込みが激しい。

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小さな木彫りのホロホロチョウ。見つけた瞬間、「うわー、可愛い!」と叫んでしまった。お店に置きたいと思って30羽くらい買ったら、お店のお姉さんに「そんなにたくさん!?」と笑われた。


次の宿、リバークロッシングロッジに投宿。想像をはるかに超えた良い宿だった。何より部屋からの眺めが素晴らしく、到着するなり皆で歓声をあげた。眺望の良い宿で旅を締めくくるなんて最高である。沢木耕太郎の『深夜特急』を思い出した。
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力みまくっていた虫探しの日々を終え、テラス席で久しぶりにのんびりと過ごした。肩の力が抜けてゆくのが分かる。部屋ではナミビアの鳥類図鑑を眺めたり、旅のあいだ毎日つけてきた日記を整理したりした。この旅行記の下書きである。

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宿は夕食も素敵だった。出てくるものがことごとく美味しい。粗食に慣れ過ぎていたので、果たしてこんな贅沢をしてバチが当たらないだろうか…などという謎の不安感が去来する。殿様のお屋敷に呼ばれた貧しい町民の心持ちである。しかし、すぐに忘れてもりもり食べた。



2月14日(木)
テラスにアカシアの棘にそっくりなガがいて驚く。前翅が伸びているのだろうか。これはすごい造形だ。
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チェックアウトしてウィントフック市内へ向かう。お土産を買い足し、隙間時間にはカフェでレモネードなど飲みながらのんびりと過ごした。白川さんは絵はがきを買い、「もう帰り際だけど」と言いつつ、お友達に手紙を書いていた。なるほど、確かに外国から葉書が届いたら素敵だろうと思う。


この旅の最後のホテルで荷物を降ろし、レンタカー屋に行って車を返却。
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ドロドロに汚れてしまったが、故障もパンクもすることなく走り切った。ハイラックス君ありがとう。

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走行距離を計算すると、なんと3週間で4550kmも走っていた! 日本列島が南北に約3000kmなので、その1.5倍である。よく走ったものだ。出発前から車のトラブルは覚悟していて、パンクや砂にはまった時の対処法をYouTubeで予習してきたのだが、完全に無用に終わった。実践の機会がなくてよかった。


明るいうちにシーフードの店に入り、最後の夕食。明日の早朝、日本に向けて出発する。
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最後もビール。お疲れ様でした。


長かった三週間が、ついに終わった。長年の夢だったナミビアは、想像以上にさまざまな表情を見せてくれる国だった。魅力的な生きものや雄大な景観に、毎日感動を味わった。
そして、図鑑や標本ですら見たことのなかったたくさんの虫たち。虫探しというものは空振りに終わることもしょっちゅうなので、今回は文句なしの大成功だったと言えるだろう。ナミビアはおおむね治安もよく、町に行けばたいていのものは手に入り、不安なく生活できるのもありがたかった。

そして何より、リーダー丸山さんの適切な計画と安全管理がなかったら、この旅の成功はなかっただろう。こんな海外初心者の私を誘ってくださったのは本当に嬉しく、感謝するばかりだ。筒井さんも白川さんもたいへん愉快で頼もしく、一緒に過ごす毎日はとても楽しかった。あまりにも素晴らしい日々だったので、帰国後しばらくの間は毎晩ナミビアの夢を見るほどだった。


テレビのナミブ砂漠の映像に見入っていた、幼いころの自分をふと思い出す。数十年後に君はそこに行くことになるんだよ…と言ったら、どんな表情をするだろうか。信じられないほどの空の青さや、砂漠をちょこちょこと走り回る甲虫についても、あの頃の自分に話をしてあげたい。きっと喜ぶことだろう。



エンドロールとして、改めて今回のメンバーを。

丸山さん。
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筒井さん。
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白川さん。
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私。
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(道端の野生化したスイカを味見しているところ。衝撃の不味さだった)


改めて、今回の旅でお世話になった丸山さん、筒井さん、白川さん、さまざまな形で助けて下さったすべての皆様に、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。


参考文献
パトリス・ブシャー著, 丸山宗利監訳, 2016. 世界甲虫大図鑑. 東京書籍
Gussmann, C. & E. Holm, 2004. The African Jewel Beetles. Taita Publishers
Koch, C., 1955. Monograph of the Tenebrionidae of Southern Africa. Vol.1(Tentyriinae, Molurini, Trachynotina, Somaticus Hope). Transvaal Museum Memoir No.7
Mares, J., 2002. A Monograph of the genus Manticora. Taita Publishers
水野一晴・永原陽子編著, 2016. ナミビアを知るための53章.明石書店
Sinclair, I. & J. Komen, 2017. Birds in Namibia. Struick Nature
山口進, 1996. 砂漠の虫の水さがし(たくさんのふしぎ136).福音館書店
山口進, 2017. 珍奇な昆虫. 光文社


# by isohaetori | 2019-08-01 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(7) 事件発生

ナミビア旅行記(6)からの続きです。


2月10日(日)

引き続き北部のツメブ周辺での探索である。『ドローン墜落の宿』を出て、100kmほど離れた場所にあるSロッジへと向かう。
途中で待ちに待った大雨が降った。雨の後は虫が多く現れるので、夜が楽しみだ。
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ロッジに到着。なんだか変な虫が飛んでいるなと思ってよく見ると、丸い鞘翅のベニボタルだった。
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ここのガレッタは少し赤っぽい。





ここはマンティコラの本命ポイントと目していた場所である。事前に某国の研究者から、ちょっと前にここでマンティコラを見たという確実な情報を得ているのだ。丸山さんの人脈恐るべしである。夜になるのを待ち、ここにいなかったらどこでだって無理だろうと、鼻息も荒く歩き回った。

おまんじゅうのような可愛いカエルがいた。
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そしてついに。
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産卵しているメスだ! お尻を上下に動かしつつ、卵を産みこむ穴を掘っているようだ。
後ろには盛り土ができていて、けっこう深く穴が掘ってあるように見える。はて、ハンミョウのお尻にこんな土木作業ができるような器官はあっただろうか。しばらく観察したがよく見えなかったので、腹部の構造は後で調べてみることにする。

マンティコラの写真を撮る私。白いのはツインストロボ用のディフューザーで、手作りしたもの。
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結局、この日の夜歩きでマンティコラの♀2頭を発見した。産卵行動の観察もできた。時期は終盤という感じがするが、貴重な場面を見られて感無量である。生きていてよかった。



2月11日(月)

今日は虫のことは忘れ、エトーシャ国立公園へ行くことにした。せっかくアフリカに来たのだから、サバンナの動物を見ない手はないという判断である。

ここはエトーシャ・パンという湿地が有名で、乾季にはアフリカらしい野生動物がたくさん集まる場所である。今は雨季のため分散してしまっていたが、それでも車を走らせているとさまざまな動物が現れる。

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インパラ。


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キリン。



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ヤマシマウマ。



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オグロヌー。



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遠くの池に、フラミンゴの群れがいた。



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ライラックニシブッポウソウ。おとぎの国にいそうな、という言い回しがこれほどぴったりくる鳥もいないと思う。望遠レンズが欲しかった。


車内から見る動物たちに大興奮する我々だったが、その後がたいへんよろしくなかった。帰り際にゲートで荷物チェックがあり、後部座席にドローンがあるのを見咎められたのである。ゲートのおばちゃんの表情が、一瞬にして険しくなった。

「ここはドローン禁止なのよ! 他の荷物も見せなさい」


やってしまった。壊れたドローンを積みっぱなしにしていたのを、すっかり忘れていたのである。国立公園内ではドローンの使用は禁止なのだが、所持すらダメだったとは。

職員が続々と集まってきて、かなり険しい雰囲気が漂いだした。ただでさえ強いおばちゃんの目ヂカラが五割くらいアップしている。怖い。そして主犯格とみなされたのか、丸山さんは問題のドローンとともに事務所に連れて行かれてしまった。


車に残された私と白川さんも追及されることになった。虫採り網や整理済みの標本、旅の序盤で拾った何かの角まで積んでいたので、完全に密猟者扱いをされてしまったようだ。荷物も全部開けられ、レンジャーにあれこれと問いただされた。どうも本格的にまずいことになってきた。

追い込まれた私は、確かに我々は虫屋だが、他の土地での採集は許可を取っているし、この公園内では何も採集していない、絶対してないと拙い英語で力説した。実際、この国立公園に来てからは動物の写真を撮っていただけで、虫一匹採っていないのである。白川さんの場を和ませる巧いトークもあり、車の荷物に関しては何とか切り抜けることができた。


事務所に行くと、丸山さんはいかつい男たちに囲まれ、厳しい取り調べにあっていた。やはりドローンを所持していたことが問題になってしまったのだ。

とはいえ、前の宿で墜落して壊れてしまったドローンである。当然それ以来使ってもいない。これは壊れていて飛ばせないのだと丸山さんが必死に説明し、職員の目の前で実際に操作してみせることでなんとか収まった。とてつもなく長く感じられた時間であった。筒井さんには申し訳ないが、ドローンが壊れた状態で本当に助かった。もし使える状態だったら疑いは晴れなかったかもしれない。そうなるとどんな罰則が待っていたことか。

ここでは結局罰金を払うということで決着し、最寄りの警察署へ支払いに行った。この時ばかりは緊張していて、さすがに写真を撮っていない。



憂鬱な気持ちでロッジに戻り、気をとりなおして夜の探索に移る。昨夜より条件が良く、産卵しているマンティコラをいくつも見つけた。お尻をときどき動かしている様子を動画に撮った。





オスは一頭だけ見つかった。脚先などがあちこち欠けていて、やはり時期が遅かったようだ。種はManticora livingstoniだった。

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ライオンゴロシの花が咲いていた! トゲトゲした実をつけることで有名なやつである。憧れの植物だったのでたいへん嬉しい。

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社会性のクモ、Stegodyphus sp.(イワガネグモ科)の巣を見つけて感激した。血縁関係にある数十頭からなるコロニーである。住居部分と狩り用の網部分がある。素晴らしい! 良いものを見た。

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次第に雨が強くなってきたので、夜回りは切り上げることにした。私のカメラは防水でないので、こういう時に弱い。

ロッジに戻って、お疲れさまのビール。本格的な虫探しは今夜で最後だ。長かった旅行も終わりに近づいている。当初のお目当てだった虫たちは一通り見ることができた。最後に違反キップを切られて意気消沈したが、虫についてやれることはやり、大きな成果が上がったという達成感がある。旅行に出て、虫はもう満足かな、と思ったのは初めてのことだ。


ナミビア旅行記(8)へと続く。次が最終回です。


同時進行中の丸山さんの旅行記はこちらからどうぞ!

# by isohaetori | 2019-07-20 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(6) 北部へ転戦

ナミビア旅行記(5)からの続きです。

2月7日(木)
朝起きたら、ずいぶん楽になっていた。測ってみるとバッチリ平熱。やっと治った。しかしこの程度で済んでよかったと思うべきだろう。丸山さんと白川さんには心配をかけてしまい本当に申し訳ない。

三日間お世話になった(ほぼ寝ていた)ロッジをチェックアウトし、いざ北部のツメブ方面へ。行きがけに最寄りの海岸でモモイロペリカンを見た。
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丸山さんの優しさにより、最後にもう一度キリアツメ探しに挑戦しようということになった。ずっと寝込んでいた私のために時間を作って頂き、ありがたい限り。
そういうわけで、朝のうちに目ぼしいポイントに立ち寄ってもらった。しかしうまくいかないもので、キリアツメどころか他の虫の姿すら見当たらなかった。よほど気象条件の整った時でないと現れないのだろう。これは仕方ないね…という判断を下し、改めて北部へ移動することにした。残念だけれど、虫探しは狙い通りにゆかないことも多いのだ。


ここからは宿も決まっていない、行き当たりばったりの旅である。 私はとりあえずオカハンジャまでを担当し、4時間ほど運転した。長距離の運転にも慣れてきたし、どこへ行っても景色が良いので運転は苦にならない。


道中で検索して見つけた宿はなかなかよかった。ロッジではなく、頑丈な軍用テントみたいなのに泊まるのである。しかしちゃんとベッドもあり、しかも安い。地面を見るとそこらじゅうに穴が開いており、虫が多いのが一目でわかった。植生が豊富で、直前に雨が降ったらしいのも好条件だ。
夕食の後、車から電気を引いてライト点灯。スカラベがたくさん飛んできた。
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憧れだったゾウゴミムシダマシ。重戦車のようないかめしい姿で、しかも大きい。めちゃくちゃカッコいい。


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立派なナンバンダイコクがいた。


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大きなコメツキムシ。Tetralobusという属だろうか。この幼虫はシロアリの巣内で育つという。


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好蟻性のミツギリゾウムシ。


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ウスバカゲロウの一種が産卵していた。


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なぜかトタテグモが巣の外に出てじっとしていた。よくよく見ると巣の中にアリが入り込んでおり、それを嫌がって出てきたようだった。


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巨大なヤモリ。ものすごく迷惑そうにしていた。


テントの前でメンフクロウに出くわした。私がテントを出た瞬間、翼を広げてこちらへ飛んできたところを鉢合わせしたのである。お互い気がついたのがほぼ同時で、「あっ、やべっ」という感じで慌ててUターンするメンフクロウが可愛かった。メレ山メレ子さんが書いていた通り、正面顔が完全に源氏パイだった。しかし一瞬のことだったので写真はない…。

夜の虫探しは楽しいのだが、私は病み上がりでもあるし、翌日の移動のことも考えて早めに寝た。


2月8日(金)
朝5時30分に目が覚め、トイレの灯りをチェックする。まったく大したことのない灯りなのだが、光の波長が適しているのか、ここだけ細かい甲虫がたくさん落ちている。
薄毛のライオンコガネといった風情のコガネムシがいた。地面に怪しい土盛りがいくつもあり、そこをほじくると出てくる。
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そしてついに! テントのすぐ横にマンティコラが現れた!
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ついにやった! この旅の目的のひとつ、正真正銘のマンティコラである。ちなみにこの個体はメス。
そこから慌てて周囲を探すが、結局他の個体は見つからなかった。

ピカピカのフンコロガシ、Garettaの一種が糞球を転がしていた。いかにも不器用だが一生懸命という感じで、見ているこちらもつい力が入ってしまう。


虫の多い環境に後ろ髪を引かれつつ、200kmほど移動して次の宿へ。ここの敷地にはコサイチョウの一種がたくさんいた。実に美しい鳥だ。
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夜は部屋から延長コードを伸ばし、テラスでライトトラップを行った。蒸し暑い好条件で、ものすごい数の虫が飛来した。
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変わったコガネムシ、キロン(Chiron sp.)も飛んできたので狂喜した。こいつは小さいが大顎が発達しており、体はヒョウタンゴミムシを小型にしたような変てこなコガネムシである。アフリカやマダガスカルを中心に少数の種が分布し、ごく一部のコガネオタクには人気がある(と思う)。
この日はガも多かった。美しい大型のヤママユが多数飛来したが、虫を見て回るのに夢中で、この日はあまり写真を撮っていない。


2月9日(土)
朝食の後ロッジ周辺を見回り。しかし環境は悪くなさそうなのに、不思議と虫が見つからない。私の目が悪いのだろうかと落ち込みそうになったが、丸山さんや白川さんも苦戦したようだ。何より日差しがきつく、あまり頑張ると熱中症になってしまいそうである。

暑さでばてるとロッジで休憩した。白川さんがニンテンドーswitchを持ってきていたので、合間にマリオカートで遊ぶ。ゲーム会社に勤める白川さんはさすがにうまく、丸山さんも私も簡単にやられてしまう。しかし丸山さんはすっかりハマって腕を上げ、旅の終盤にはかなりの接戦を繰り広げるようになった。


そうこうしているうちに夜になり、ライトトラップの時間である。しかし、昨夜はあれほど虫が来たのに、この夜のライトは成績が悪かった。雨が降って気温が少し低いせいかもしれない。

ロッジの壁にナガイボグモの一種が棲んでいた。科レベルで見たことのないクモなのでとても嬉しい(ナガイボグモ科のクモは、日本では沖縄に行かないと見られない)。
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ガの仲間をくるんで食事をしているところ。



2月10日(日)
チェックアウトの日である。鍵を返した後、筒井さんが置いていったドローンを飛ばしてみようということになった。
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ところが、丸山さんが操作している時、ドローンが突然コントロール不能に!
「あー!! やばいやばい!」
悲痛な叫び声、そして急降下するドローン。



一同「…………」

石垣にぶつかる嫌な音が響き、筒井さんの高価なドローンは壊れてしまった。ローターは回転するのだが、離陸ができない。

「これ、結構高いんだよね?」
「確か10万円くらい…」
筒井さん、本当にごめんなさい。
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犬「(何してるのこの人たち…)」

やっちゃった感を車内に満たしつつ、さらに100kmほど北へ移動する。次こそがマンティコラの本命ポイントである。



丸山さんも旅行記を同時公開中! こちらからどうぞ。

# by isohaetori | 2019-07-17 17:24 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(5) ウォルビスベイで一回休み

ナミビア旅行記(4) からの続きです。

2月4日(月)
このロッジの朝食はビュッフェ形式で、お腹いっぱい食べられる。各種のチーズがあり食べ比べが楽しい。ヤギのミルクで作ったチーズは美味しいが、かなり癖がある。こういう日本ではあまり出会えない食べ物が嬉しい。

出発前、駐車場にあったトランポリンで遊んだ。コロンと転がる丸山先生がちょっと可愛い。これはファンの喜びそうな映像が撮れたぜ、しめしめ(ゲス顔)




ロッジを出て、ウォルビスベイという港町へ向けてひたすら走る。これから目指す海岸沿いの砂丘では、キリアツメ、もしくはサカダチゴミムシダマシと呼ばれるゴミダマを探す予定だ。ついに幼いころからの憧れが現実になる! 期待に胸が膨らむ。

しかし妙なことに、長時間運転していると気分が悪くなってきた。行程の半分くらいを走ったところで限界を感じ、丸山さんと運転を交代してもらった。どうもおかしい。車酔いはめったにしないのだが。

途中の海岸近くで車を降り、道路脇の砂丘を見てみる。海からの風が寒い! そして潮の匂いを嗅ぐのは久しぶりだ。
白川さんと私。
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ここは別の砂丘。
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ロケハンを終え、ウォルビスベイの宿にチェックイン。荷物を置き、どうにもだるいので体温を測ってみたら、38度を示していた。ここにきてまさかの発熱である。興奮しすぎての知恵熱か、暑気あたりか、疲れがでたか。全部かもしれない。思えば今日の移動の時点で熱が出ていたのだろう。今夜は砂丘を歩く予定だったのだが、私は外出をやめて養生することにした。せっかく憧れの砂丘に来たというのに、悔しい。


2月5日(火)
昨夜から熱は上がったり下がったり。振り返ってみると、これまで連日のように夜遅くまで採集し、昼は休息と言いつつも暑い中をそれなりに出歩き、なんだかんだで疲労が溜まっていたのかもしれない。
それにしても異国の地で体調を崩すのは不安なものである。熱を下げるべく、わざと厚着をしてベッドに入り、汗をかく努力をする。塩分不足を感じ、時折ふらふら起き出しては台所でペロペロと塩を舐める。奇怪な行動である。はた目には何かの妖怪としか思えない。

昼過ぎに丸山さんと白川さんが戻ってきたので、昨夜見つけたというエンバンゴミムシダマシ(ミゾホリゴミムシダマシ)を見せてもらった。体全体が白い、憧れのゴミダマである。驚いたことに、後脚を鞘翅の縁に擦り付けて発音した! これは興味深い。何か交信に使っているのかもしれない。


一日寝ていたら少し持ち直したので、夕方から私も砂丘の虫観察に行くことにした。
事前に本で読んでいた、ナラAcanthosicyos horridusの実があって感激した。葉らしい葉がなく、トゲばかりの怪しい姿をしているが、これでも一応ウリ科らしい。
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その実はナラメロンと呼ばれ、現地の人々の貴重な現金収入源になっている。種子からはオイルが採れ、果肉は甘くて美味しいらしい。食べときゃよかった。

その群落周辺に、黒い小型のゴミダマがちらほら。可愛い。
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派手な色のゲンセイが、ナラの枝先で休んでいた。捕まえると黄色い液体を出す。


夜になるとエンバンゴミムシダマシが目につくようになってきた。昼間はまったく見当たらなかったのに、まるで砂から湧いて出たようだ。かと言ってどこにでもいるわけではなく、砂がさらさらした斜面の際の、植物群落のあるあたりに多いようだった。砂が硬くしまっている場所にはまったくいない。
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彼らは霧の出た日に変わった行動をとることで知られている。小さなブルドーザーのように溝を掘って土手を作り、そこに凝結した水分を飲むのである。光にかなり敏感で、すぐに縮こまってしまううえに、そもそも脚を伸ばした姿勢の個体がほとんどいないので撮影しにくい。

かの有名な砂漠のヤモリ、Pachydactylus rangeiにも遭遇した。
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念願だった正面顔の写真も撮れた。長年憧れていたヤモリだ。感激で胸が熱くなる。

これは別の種類のやつ。この手のチョロチョロしてるやつはみんな可愛い。
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宿に帰ると、また熱が出ていた。困ったものだ。明日はまた休むことにする。マラリアの可能性も払拭できず、今夜からマラロンを飲み始めることにした。


2月6日(水)
昨夜は熱が38度を超える時もあり、さすがに不安になってきた。頭が朦朧とする。今日は終日砂丘で過ごす予定だったが、私は宿でひとり留守番をすることにした。この旅の山場となるはずの砂漠をパスすることになるなんて、つくづく情けない限りである。砂漠のキリアツメにはずっと憧れていたのだけれど。

カロナールを飲み、滝のような汗をかいたら少しすっきりした。夕方になるとやっと体温が落ちついたので、キッチンでもそもそと卵がゆを作って食べた。さらに白川さんがたくさん持ってきたお菓子やビタミン剤など、喉を通るものをできるだけ食べると、気持ちが前向きになってきた。

夕方、丸山さんと白川さんが帰ってきた。キリアツメをおみやげにくれて、ありがたし。キリアツメは日中の風が強いなか、砂丘を走り回っていたという。憧れのキリアツメは想像以上に大きく黒く、つやつやと輝いていた。

結局、私はこいつの野外での姿をついぞ見ることがなかった。無念。



丸山さんも旅行記を同時公開しています! こちらからどうぞ。


# by isohaetori | 2019-07-12 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(4) 筒井さん帰国、白川さん到着

ナミビア旅行記(3)からの続きです。

2月1日(金)
キャンプ場を後にし、前日から気になっていた岩山を歩いてみた。荒々しい、迫力ある景観である。
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筒井さん、広大なナミビアの大地に立つ。

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白い模様のあるStenocara sp.がいくつか見つかった。脚が長く、動きは素早い。

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金色に輝くチビタマムシがいた。花も少し咲いていて、少数ながらハチも飛んでいた。じっくり撮影したかったが、今日はそれなりに距離を稼がなければならないので、あまりのんびりはしていられない。


途中のスーパーで昼食をとる。
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ポテトの揚げたもの、魚の揚げたもの、鳥の揚げたもの。とにかく揚げときゃいいんだろ!的な雑さが良い。肉は硬めだが、美味しい。


本日のロッジ。広大な荒れ地の中にあり、近隣に住民はまったくいなさそうである。
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車に備え付けの冷蔵庫からビールや食料を出す。

ここで最も衝撃的だったのは、巨大なトゲトゲのキリギリスである。
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メカっぽさがすごい。のんびりしていて、動きは鈍い。ちょっと間が抜けた感じの顔も可愛い。ペットにしたいくらいだ。しかし捕まえると青臭い妙な液体を胸のあたりから噴射してきた! これにはかなり怯んだ。

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アンティアもいた。この種はナミビアに広く分布しているようだ。

この日も水銀灯を点けたがほとんど虫が来ず、あまつさえ夜10時半にはロッジの電気が切れてしまった。車のシガーソケットから電気を取って夜店を続行したが、やはりいまいち。
筒井さんは風邪気味とのことで、早めに切り上げることにした。


2月2日(土)
8時に母屋の棟で朝食。パンやハムやチーズのシンプルな食事である。
建物の周りの茂みを探すと、大きなコブスジコガネがいくつも見つかった。猛禽のペリットが少なからずあり、どうやらそれに来ているようだ。主人によると、建物の屋根にはフクロウが住んでいて、たまにトコトコと足音が聞こえるそうである。生息環境が分かって嬉しい。
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ここは面白い虫が多かったのでそれを伝えると、最近モスクワのチームも採集していったとのこと。納得である。それも雨が降ったかどうか、電話で確認してから来たようだ。雨のあとは虫が一気に出るので、これは賢いやり方だと思う。ライトと白幕を持ってきて、ライトトラップをやっていたらしい。

明日は筒井さんが帰国する日である。道みち風景写真を撮りつつ、のんびり首都へと向かう。
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途中の幹線道路を、リクガメが横断していた。慌ててUターンして拾い上げる。
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可愛い。車に轢かれなくてよかった。道から離れた草むらに放した。

長いドライブを終え、最初に泊まったロッジにチェックインした。筒井さんはドローンをこれからのために置いていってくれるとのことで、操作方法を習った。
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こういう写真が撮れるなんてすごいなあと、口を開けてアホみたいに感心した。
夜は敷地内を軽く見回った後、お疲れさまの乾杯をした。こちらに来てからというもの、ビールばかり飲んでいる。


2月3日(日)
朝4時30分に起き、筒井さんを空港まで送る。あっという間の十日間だった。筒井さんの豊富な引き出しの中から出てくる話は何でも面白く、道中はいつも楽しかった。
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ロッジに戻り、朝食。しっかり食べ、今日は休息日というつもりでだらだらする。洗濯、爪切り、二度寝など。
白川さんがナミビア入りしたので、午後から空港へ迎えに行った。白川さんは丸山さんのお友達で、一見危なそうな外国にも一人で出かけていく、めちゃくちゃに行動力のある女性である。単身ニューギニアに渡り、ジャングルの中の地元民の家で暮らしていたこともあるという。世界ふしぎ発見のミステリーハンターになれそうだ。

陽が落ちてから、3人で敷地内の見回り。エントランス付近の灯りには虫が多かったが、飼い犬が吠えるのであまり近づけなかった。
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ヒメサスライアリが狩りの行軍をしていた。

ウスバカミキリがぽつぽつと見つかる。個体差がけっこうあり、大型のはクワガタのように伸びた大顎がかっこいい。
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灌木の見回りで、大型の個体がひとつ採れた。
私「丸山さん! 超でかいカミキリ採れましたよ!」
丸「お、すごいね! でもまあ、俺はもっとでかいの採ってるけどね(ドヤァ)」
私「子供か!?」
採った虫の大きさで醜く張り合う大の大人…。



丸山さんも旅行記を同時公開中! こちらからどうぞ。



# by isohaetori | 2019-07-06 07:34 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(3) ナミブ砂漠へ

ナミビア旅行記(2)からの続きです。

1月30日(水)
今日はナミブ砂漠方面へ移動する日である。距離にして約540km、6~7時間はかかる行程だ。

ナミビアの道路地図を見ると、太い道路にはB1やC19というように、BからDまでのアルファベットがついている。Bは完全に舗装された幹線道路で、Cは未舗装の部分もある、やや注意を要する道である(四駆なら走れる)。Dは道幅の狭い完全なダートで、普通車で走るのは危険だ。
この日は大急崖帯を抜けるCルートを走る必要があった。中央高地から海岸沿いの低地へと下る山道だが、タイヤは悪路用の丈夫なものだし、丸山さんの手慣れた運転のため安心していられた。そして次々と現れる雄大な景観には飽きることがない。
山道を抜け、平坦な大地に出た。
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シャカイハタオリ Philetairus sociusの巨大な巣があった。
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この巣は多数のつがいが住むマンションのようなものである。人の背丈と比べてみると、その大きさが分かると思う。
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シャカイハタオリは、シルエットも大きさもスズメによく似ている(スズメも同じハタオリドリ科に属する)。嘴は銀色。この小さな鳥が、これほど巨大な巣を作り上げるとは驚きだ。

筒井さんのジャンプ、100点!
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巨大なユーフォルビアと丸山さん。

ときどき車を停めては写真を撮っていたので、目的地に着いたのは夜の7時近かった。キャンプ場は営業時間を過ぎていたが、なんとか受付をしてもらえた。一人210ナミビアドルで、温水シャワー、トイレつき。
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(筒井さん撮影)
せっかく買ったガスコンロは不良品で使えなかった! これには困ってしまった。急きょ木炭を買って火を起こすが、全然火力が足りず、生煮えのパスタを食べる羽目に。


暗くなってから見回りをする。なんと、Epiphysaという砲丸のようなゴミムシダマシが見つかった。この近辺で得られた標本をお店で扱ったことがあり、ここに来たら絶対に見たいと思っていた虫である。嬉しい。しかしこれ以外はほとんど虫がいない。
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前髪のような金色の毛がある。まんまるで艶消しの体がとてもカッコいい。和名はないので、「ホウガンゴミムシダマシ」と勝手に呼んでいる。
(追記: 今度出る本『とんでもない甲虫』で、丸山さんは本種に『マエガミパッツンゴミムシダマシ』と命名した)

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可愛い砂漠のヤモリ、Ptenopus sp.がいた。

あずまやのコンセントから電気をとり、ライトを点灯して虫の飛来を待つことにした。驚いたことに、夜になって間もなく、ライオンコガネが一頭飛んできた。
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昨日見た種とは異なり、毛は白く、より密なタイプである。モコモコでとても可愛い。

明日は砂丘へ行くので、早めにテントを張って寝てしまうことにした。野良猫が頻々と現れて、荷物を漁ろうとするので追い返すのに苦労する。セグロジャッカルがテントのすぐそばまでやってきたのには驚いた。野生動物を間近で見られるのは嬉しい反面、狂犬病の怖さもあり、過度の接近遭遇は絶対に避けたいところ。



1月31日(木)
夜のうちにジャッカルがいたずらしたようで、外に置いていた丸山さんの吸虫管が破壊されていた! ゴミダマを入れていたボトルも持ち去られていたが、テントからだいぶ離れたところで発見された。

キャンプ場周辺で見られた、トゲトゲの実をつけるマメ科の植物。Caesalpinia pearsoniiと思われる。実の直径は一円玉くらい。
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砂丘へ向かう途中、道端で出会ったオリックス。こんな野生動物がそこらへんを歩いているとは。
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そしていよいよ、この旅の大きな目的のひとつであるナミブ砂漠へ。
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言葉を失う絶景である。空が青い。何かの錯覚かと思えるほど、とてつもなく青い。真っ赤な砂と真っ青な空の対比が強烈で、よくできたコラージュようだ。砂丘の砂はさらさらで、足が沈み込むので登るのに苦労する。私は脳内がお花畑状態だったので、ほとんど写真を撮っていなかった。以下は筒井さん撮影。
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やや息が上がっているおじさん三人組。私は左足が斜面に沈んでいくのをこらえるのに必死で、妙な姿勢になっている。

子供の頃から憧れていた、あのナミブ砂漠に立っているという実感がどっと押し寄せてくる。しかし押し寄せすぎて、この状況に気持ちの整理が追いつかない。脳が処理落ちしそうな感じである。なんなんだこの凄い光景は。あまりにも広大すぎて、視線の配りかたがわからない。
圧倒的な景観に語彙は完全に失われ、「すごい、すごい」しか言うことができない。この感動を伝えるには一体何を使えばよいのか。私のカメラではあまりにも無力なのは確かだ。

砂丘の斜面を高速で走るゴミムシダマシがいた。丸山さんが走って追いかけ、捕獲。筒井さんが最高な写真を撮ってくれたので、それについては丸山さんの記事をどうぞ。今回の旅のハイライトである。

着いたのがお昼前だったこともあり、砂丘はすでに灼熱だった。湿度が低いので体感温度はそれほどでもないが、40度以上はありそうだ。汗はかいたそばから蒸発してしまうので、服が汗びっしょりになるということがなく不思議な感じがする。また、暑さのせいか虫が非常に少ない。

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良い笑顔の丸山さん。砂漠のドライブは楽しい。


圧倒的な充実感を得て砂丘を後にし、昨夜とは別のキャンプ場へ。テント泊もなかなか良いものである。
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メスを追いかけて走るゴミムシダマシ。これこれ! これを見たかったのだ。


しかしこの日は電気が来ておらず、シャワーも使えず、夜間はゲートを閉めてしまうので車も出せないということが夜になってから判明した。仕方がないのでヘッドランプの明かりで敷地内を見回ることにする。

初見の毛深いトックトッキーがいた。
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刺されたらやばそうなサソリ。
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可愛いヤモリ。
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立ち枯れ木の見回りで、カッコいいウスバカミキリの一種も見つけた。かなり個体差があり、丸山さんが特に大型の個体を採っていた。アフリカらしい、とても良い虫である。

最後にダメでもともとという気持ちで、筒井さんが携帯式のUVライトを点灯。最後の最後にライオンコガネが飛んできた。昨日見たのと同じ、もふ度の高いタイプである。よかったよかった。

ナミビア旅行記(4) に続く。(公開済みです)

丸山さんも旅行記を同時公開中! こちらからどうぞ。


# by isohaetori | 2019-07-06 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(2) サバンナで虫探し

ナミビア旅行記(1)からの続きです。


2019年1月26日(土)

今日から本格的な虫探しが始まる。

まずは自炊用のガスコンロを求めて市内の店を回ったあと、東の町ゴバビスへと向かう。道はきちんと舗装されており、道幅は広くないものの運転しやすい。

時々車を降り、石を起こしたりアカシアの林を眺めたりして、軽く虫を探しながら移動する。

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さて、アフリカと言えばゴミムシダマシ、ゴミムシダマシと言えばアフリカである。道路わきの石起こしで、こんな面白い姿のやつを発見した。Eurychoraという属だろう。蝋のような分泌物を出し、背面に砂やゴミをたくさん付着させている。ゴミダマオタクとしては、ぜひ見てみたかった種だ。

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アカシアの茂みを歩いていると、ブーンという力強い羽音とともにフトタマムシが飛んだ。Sternocera orissaだ! 夢中で追いかけた。

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感動に打ち震える。私はフトタマムシが大好きなのだ。まさかこの目で生きたフトタマを見る日が来るとは…。感無量である。

このオリッサは線路沿いのアカシア林にたくさんいると判明した。しかし、棘だらけの木の周辺で網を振るのはなかなか難しい。網を枝に何度も引っかけて、破ってしまった。

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オリッサは遠沈管に入れて生かしておくと、中で卵を産んでいた。事前にフトタマの本で見ていた通り、かなり大きくて硬い卵である。フトタマの幼虫は土中で木の根を食べており、卵も砂の中に産下される。そのため乾きに強い造りになっているのだろう。


ゴバビスに到着し、まずは燃料補給をする。ガソリンがとても高い。我々の車はディーゼルだが、リッターあたり100円以上する。それに燃費が悪いのでどんどんなくなる。車には燃料タンクが二つあり、合計140リットル入るが、残りが半分になる前に給油した方が良さそうだ。何しろ町と町の間の距離が長いので、ガス欠を起こすとたいへん面倒なことになるのである。



ロッジに向かう途中、第一キリンに遭遇。

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これから3泊するロッジ。キッチンと調理道具一式がついており、毎日自炊することになる。周囲は典型的なサバンナである。

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マカロニとソーセージで腹ごしらえを済ませ、夕方から敷地内を歩き回って虫を探す。薄暗くなると、地中に潜んでいた虫たちがぽつぽつと地表に現れはじめる。

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一番多かったゴミダマ、Psammodes vialis。この仲間はアフリカではトックトッキー(Tok-tokkies)という愛称で呼ばれている。オスは腹を地面に打ちつけて音を出し、仲間と交信する。


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カッコいいアンティア(オサモドキゴミムシ)の一種。日本のオサムシより一回り以上大きく、発達した大顎と相まってすごい迫力だ。



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ド派手なバッタ。いかにも毒をもっていそうな色合いである。


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糞玉を転がすスカラベも見た。糞虫も大好きなので、感激もひとしお。


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宿のテラスに水銀灯をぶら下げ、虫を呼ぶ。


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アリノスハナムグリの一種が来た!



文献によると、マンティコラは降雨の後に現れるという。ここ数日は雨が降っていなさそうだし、実際どこもかしこもカラカラである。

結局10時過ぎまでサバンナをうろつき、もろもろ片づけて寝たのは12時くらい。それなりに粘ったものの、結局マンティコラには出会えなかった。しかし初めてのアフリカとあって、見る虫すべてに興奮しっぱなしだった。体力が無限にあるなら一晩中歩きたいものだ。



1月27日(日)

この時期のナミビアは雨季の真っ只中である。

雨季というと雨がしじゅう降ってばかりの天気を想像されるかもしれないが、実際はそうでもない。ナミビアの雨季は、数時間大雨の降る日が時々あり、あとは晴れているというのが普通らしい。そしてまとまった雨の後は虫が急に活動的になる。マンティコラが出てくるのもそんな時、それも夜間だという。そのため、我々は雨を待ち望んでいるわけである。


さて、朝の涼しいうちにロッジの周りを散歩する。我々の泊まっている棟のすぐ裏手に、こんな可愛らしいリクガメがいた。はじめは石か何かかと思った。

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ノコヘリヤブガメというらしい。可愛い。飼いたい。もちろん連れて帰るわけにはいかないが。


アカシアには大きくて派手なゲンセイがいた。時おり大きな羽音をたてて飛んでいる。棘だらけの枝にいるやつを狙うと網が絡まって大変なことになるので、枝を叩いて飛び立ったところを掬うとよい。飛ぶと腹部の赤い紋が見えて美しい。

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敷地内にもいたオリッサ。

しかし、暑い日中はあまり虫が活動しておらず、目につくものはそれほど多くない。


夜はソーセージを焼き、パスタとともに食べた。

ソーセージはスーパーで生のものを売っており、血も混ぜてあるのか実に美味しい。種類も豊富である。日本で食べるソーセージよりも脂は少なめで、噛むほどに肉そのものの味が楽しめる。これには感激した。ナミビアはかつてドイツ領だった事情があるためか、ビールもソーセージも美味しいのが素晴らしい。

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丸山シェフ。



夜はサバンナの中をうろつき、アンティアを探した。彼らはブッシュの近くによくいる。種によって大きさや模様もさまざまで、眺めていてとても楽しい。

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よく見ると、そこそこの確率でツチハンミョウの幼虫がついている。ツチハンミョウは寄生性の昆虫で、孵化した幼虫はホストを目指し、動く虫になら手当たり次第に便乗しようとする。しかし目的の虫に辿りつける個体はごくわずかでしかない。上のアンティアも鞘翅に一匹幼虫を乗せているが、この時点で幼虫の運命は決まってしまったと言える。


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アンティアは捕まえると怪しい液体を噴射してくる。この液体が強烈で、臭い上に皮膚につくと火傷をしたようになる。触るときには必ず手袋をしていたのだが、液が浸みこんできた部分は皮膚がただれて剥けてしまった。また、この防御液はかなりの勢いで噴射されることがあり、まともに顔に浴びてしまった時はかなり焦った。眼鏡をかけていたので事なきを得たが、目に入っていたらひどいことになっていただろう。

結局、今日も雨は降らなかった。しかし天気予報によると、明日は雷雨があるとのことで、期待がもてる。



1月28日(月)

朝から快晴。風が強い。ぼんやり歩いていたら、風に煽られた網がアカシアの棘に絡め取られ、ついに大穴が空いてしまった。やはり網の予備は持ってくるべきである。筒井さんに裁縫セットを借り、なんとか修繕した。あまり得るものもなく、夜に備えてロッジでだらだらする。

筒井さんはドローンを持ってきており、飛ばしてみせてくれた。

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こういう写真が撮れる! すごい。


トックトッキーを拉致してきて、しばらくの間飼育してみた。飛んで逃げる心配がないので、プラスチックのどんぶりが飼育容器だ。たまに腹をこつこつと鳴らすのが面白い。そして大食漢である。水をあげるとごくごく飲み、パンをあげるとびっくりするほどよく食べる。ペット昆虫として優秀。日本では飼えないのが残念だ。

こつこつと音を立てる様子を撮ってみた。


数日飼っていたら情が湧いてしまい、毒瓶に入れられなくなってしまった。この個体は結局、食わせるだけ食わせてサバンナに逃がした。



夕方から街に出て買い物。ビール、ソーセージ、ツルハシなどを買い込んだ。

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ロッジに帰るころには稲光とともにポツリポツリと雨が降り出し、待ちに待った夕立となった。地面が濡れたことで、夜のサバンナに明らかな変化が起きた。どこに隠れていたのかと思えるほど、たくさんのトックトッキーが地表に現れた。筒井さんが巨大で恐ろしげな姿のコオロギを発見したが、こいつを見たのは雨上がりのこの時だけであった。

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今夜は少し離れた池の跡地に向かうことにした。

時おり立ちはだかる動物よけのフェンスをまたぐ必要があったのだが、これには電気が通っていることがじきに判明した。ときどき通電されてビリッとくるのである。大仁田厚には効かないかもしれないが、それでも痛いものは痛い。丸山さんは手袋をしていなかったので辛い思いをしたようだ。私はゴム張りの軍手をしていたのでダメージは少なかったが、うっかり針金に触れた足がしびれて悲鳴をあげてしまった。良い子は真似をしないように。


ここもアンティアの多様性が高く面白い。初見の種が次々に現れてやみつきになる。3人で適度な距離を保ちつつ、めいめいヘッドランプで周囲を照らしながら歩き回った。

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その時である。丸山さんが闇の中から血相を変えて走ってきた。緊張が走る。

「どうしました!?」

「馬! 馬が追いかけてくる!!」

そう叫びながら、丸山さんはすごいスピードで走り去っていった。馬から逃げていたのだった。でかい馬がいななきながら突進してくるのはかなり怖く、実際危険である。後で私も同じ目に遭い、肝をつぶした。

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(ちょっと前に流行ったアプリで作成)

幸い丸山さんが馬に蹴飛ばされることはなかったが、逃げる途中でスマホを失くしてしまったという。走っている時にポケットから落ちたに違いない。皆で現場に戻って探しまわり、なんとか回収。見つかって本当によかった。



気を取り直し、闇に潜む動物の気配に注意しつつ、ヘッドランプの明かりで虫を探し続ける。

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巨大なヤスデがたくさんいた。恐ろしげな見た目だが、取りたてて危険なところはない平和な生きものである。葉っぱをもぐもぐと食べる様子が可愛い。


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ヒヨケムシの一種。猛烈なスピードで地表を走り回る。もうめちゃくちゃにカッコいい。


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美しいヒキガエル。


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大きなサソリ。尾が太く、この類は総じて毒性が強い。驚いたことに、このサソリは尾をじゃらじゃらと鳴らして威嚇してきた。まるでガラガラヘビのようだ。


サバンナの恐ろしいところは、方角が分からなくなることだった。まっすぐ歩いているつもりでも、知らず知らずのうちに同じところをぐるぐると回ってしまっており、少し前に通った場所に出て愕然とするのだ。これには実際ぞっとした。風景が単調で、明かりや目印になるものが何もないからである。今回は全員がmaps.meという地図アプリを使っていたので完全に迷うことはなかったが、GPSなしに夜のサバンナに入ってはならないと学んだ。


宿に帰ってきた時点で1時になっていた。筒井さんのアプリによると、12kmほど歩いたようだ。風が強く、ライトにはあまり虫が来ていない。その後軽く飲み、3時には皆寝たが、私はライトの前に残ってしつこく待った。

Gynanisa majaという、美しい目玉模様のヤママユが飛んできた。

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そしてついに、皆が寝静まった後、ライオンコガネとヒゲブトオサムシが飛来した。

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もふもふだー!! 一人で歓声をあげた。



1月29日(火)

朝は寝坊を決め込み、午後まで昼寝や日記書きをしてだらだらと過ごす。日中はあまり昆虫が活動していないため、暑い中頑張るよりも、夜に備えて体力を蓄えておいた方がよさそうだ。


好白蟻性の昆虫を調べるべくシロアリ塚に挑んだが、収穫はまったくなかった。シロアリすら出なかった。塚はガチガチに堅く、これを突き崩すのはかなりしんどい。そもそもツルハシが相当に重く、箸より重い物を持てない身としてはすごい苦行である。

この後の筋肉痛はひどかった。次は現地の屈強な男を雇おうということで、全員の意見が一致した。



地面をよく見てみると、明らかに怪しい穴がいくつも空いている。大きくきれいな円形で、周りに土盛りはない。ハンミョウの巣穴の特徴である。これは絶対にマンティコラの巣穴だろうと推測し、発掘にかかる。

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そして出た!

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マンティコラの幼虫を得ることに成功!

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すごい顔をしている。ある意味、成虫よりも貴重かもしれない。筒井さんも近くで一頭掘り出した。これは大きな成果だ。

周辺をよく探すと、他にもいくつか小さな巣穴があった。さまざまな齢期の幼虫が混在しているようだ。餌資源も不安定だろうし、成虫になるまでにはかなりの期間を要すると思われる。



夜は例によってロッジの周辺を散策した。これは小さな石ころのようなゴミムシダマシ。とても可愛いが、この一個体しか見つからなかった。

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22時30分に宿に帰ったが、ライトには全然虫がきていなかった。そして今夜もマンティコラの姿は拝めなかった。彼らが活動するには雨が足りないのだろうか。

ライトトラップもいまいちかと思いきや、まだ暗い5時過ぎにそっと起きだしてみて驚いた。ライオンコガネが次々に飛来するのだ。彼らはどうやら明け方に飛ぶらしい。あのもふもふは気温の低い時間帯に適応しているためかもしれない(後で調べてみると、過去にそういう研究もされていた)。しかし、よく見ると毛が擦れてハゲているものや、前脚が摩耗している個体が多かった。発生末期のようだ。


6時20分、明るくなったのでロッジに戻って二度寝。


ナミビア旅行記(3)へ続く。


丸山さんも旅行記を同時公開中です。こちらからお読みください。



# by isohaetori | 2019-07-03 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(1) 出発~最初の夜(2019/01/24~1/25)

前口上』からの続きです。

さて、私は海外旅行ド素人で乗り継ぎが不安だったのと、みんなと一緒に行った方が楽しかろうと思ったため、まずは福岡空港へと飛んだ。博多に出て乾燥ワカメ(重要)を含めた最後の買い出しをしたのち、丸山さん、筒井さんと空港で合流した。晴れてパーティー結成である。

筒井さんは丸山さんと親しい虫屋さんで、海外経験も豊富なナイスガイだ。私は初対面だったが、虫という共通言語があるのですぐに打ち解け、マンティコラに関する話で盛り上がった。マンティコラ(Manticora:エンマハンミョウ属)はアフリカにしかいない巨大なハンミョウで、凶悪なまでに発達した大顎を備えた甲虫だ。甲虫屋なら誰もが憧れるカッコいい虫である。
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マンティコラの標本。(イメージです)


いよいよ出発である。
今回は福岡→香港→ヨハネスブルグ→ナミビアの首都ウィントフックへと飛び、ほぼ丸一日を移動に費やした。ヨハネスブルグ行きの便では、丸太のような二の腕をした筋骨隆々の男と隣り合わせになってしまい、エコノミークラスの席がさらに辛いものとなった。

ようやくたどり着いたウィントフックのホセア・クタコ国際空港。意外に暑くはない。
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タマネギ頭のおばあちゃんが気になる…

両替をし、地元の大手キャリアMTCでSIMカードをスマホにセットしてもらう。15GBのプランでだいたい1万円くらい。
携帯電話が使えるようになったところでレンタカー屋に行き、車を借りた。ナミビアのレンタカー事情はあまり良くなく、トラブルも多いようだが、筒井さんの手腕により良い車を押さえることができた。
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借りたのはピックアップの真新しいハイラックスである。車体は大きく、悪路用の丈夫なタイヤを履いており、大変心強い。しかも荷台には冷蔵庫が装備されている。こんなものがあったらサバンナで冷たいビールを飲めてしまうではないか! いやー困ったなー。

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左が丸山さん、右が筒井さん。スーパーへ行き、水やパスタ、インスタントラーメンなどを買いこむ。節約のため、ロッジでは基本的に自炊だからだ。現地調達するつもりだったガスコンロこそなかったが、首都ウィントフックではたいていのものは揃うと分かった。

すでに夕方なので、最初のロッジへ。アフリカらしい良い雰囲気で、気分が盛り上がる。敷地内ではダチョウが飼われていた。
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3週間分なので、かなりの大荷物。

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無事に旅が始まったことを祝してビールで乾杯し、食事もそこそこに探索を開始した。ナミビアは私有地が多く、好き勝手にどこにでも入れるわけではないので、地主の許可を取ってから調査することになる。
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白黒のめちゃくちゃにカッコいいゾウムシが現れた! ナミビアの虫とのファーストコンタクトがこいつで、もう鼻血が出そうである。
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このほかにはアリバチ、ゴミムシダマシ数種、糞虫などが目についた。どれもがアフリカらしい虫で実に楽しい。虫好きには天国のような場所である。Heniochaという美しいヤママユもいて感激した。
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長時間の移動で疲れ果てたので、日付が変わる前には就寝することにした。しかしベッドにアリの行列が上がってきて、体中をちくちく刺すので眠れない。「これがアフリカの日常というやつか…」と妙に感心したが、眠れないのは困る。仕方なくロフトに上がり、埃っぽい予備のベッドで眠りについた。


丸山さんもナミビア旅行記を同時公開中!こちらからどうぞ。

# by isohaetori | 2019-06-29 06:01 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記 前口上

今年の1月から2月にかけ、三週間ほどナミビアへ行ってきた。来る日も来る日も虫を追いかけ、よく笑い、そして長距離ドライブに明け暮れた三週間だった。ここでは虫屋ブログらしく、現地の生きものの写真を中心として、楽しかった旅の記録をつけてみたい。


ことの発端は、虫屋仲間のおじさんたちで集まって飲んだときのことである。昨年(2018年)のはじめごろだったと思う。
その席には九州大学総合研究博物館の丸山宗利さんが来ていて、そこで海外調査の話題が出たのだった。言うまでもなく、丸山さんは数えきれないほどの渡航歴があり、多数の新種を発見されている方である。


丸「近いうちにナミビアへ行きたいと思ってるんだよね」
私「えっナミビア! いいですよねー私も昔から憧れてるんすよ。砂漠の虫が大好きで」
丸「だよねー。じゃあ一緒に行く?」
私「!?!?!? ええっいいんですか!? 行きます行きます! 絶対行きます!!」
まさかの急展開に混乱しつつも、一も二もなく飛びついた。


私は幼いころから外国の、とりわけ砂漠の生き物に憧れていた。逆立ちして霧から水を集めるゴミムシダマシや、熱い砂の上で交互に足を上げ下げするトカゲの映像などは、テレビの生き物番組で何度も観たものだ。そのため彼らがナミブ砂漠という場所にいることは知っていたが、子供がおいそれと行けるような場所ではなく、それは完全に遠い世界の話であった。

その後、虫屋となってからも砂漠への憧れは相変わらず募り、そのあまりにアフリカのゴミムシダマシやフトタマムシを蒐集するようになった。そしてかっこいいゴミダマの標本を眺めては、まだ見ぬアフリカの地に思いを馳せるのだった。そこにきて、ナミビア行かない? というお誘いである。来た、ついに夢が叶う時が来たと思った。酔っぱらった私は帰宅後、へんな叫び声をあげながら床をゴロゴロと転げまわった。
「うおー行くぞ! ナミビア! ナミブ砂漠!!」


ナミビア行きの具体的な話し合いは、昨年秋ごろから始まった。
期間は3週間で、メンバーは合計4人。3週間フルに動くのは丸山さんと私で、前半には丸山さんと親しい虫屋の筒井さんが入り、後半には筒井さんと入れ替わる形で、白川さんという方が入ることになった。現地で頑丈な四駆を借り、ロッジに泊まったりキャンプしたりしつつ、常時3人のメンバーで各地の自然を見て回る計画である。採集については、丸山さんが現地の状況に詳しい海外の研究者と連絡を取り、許可を取っておいてくれた。


出発の何か月も前から、メンバー4人のグループトークで毎日打ち合わせをした。今回の旅の主な目的は、砂漠のゴミムシダマシ、マンティコラ(エンマハンミョウ)、ライオンコガネなどである。そこで過去の出版物や、手元にある標本のデータラベルを片端からチェックした(標本のラベルには、その虫が得られた場所と日付が書かれているのだ)。同時に海外の研究者や標本商など、さまざまな筋からの情報提供を受けつつ、できるだけ多種多様な虫を見られるよう検討が重ねられた。装備のチェックも厳しく行い、「乾燥ワカメはインスタントラーメンに入れると豊かな気持ちになるので、絶対に忘れないように」といった注意喚起も繰り返しなされた。


f0205097_17503757.jpgさて、ナミビアという国に関して、ここで簡単に説明しておきたい。
ナミビアはアフリカ大陸の南西部に位置する。面積は82万4290平方キロメートル(地図の赤い部分)で、これは日本のおよそ2.2倍にあたる広大な国だ。しかし面積のわりに人口は少なく、2017年の時点で約253万人。公用語は英語である。

地形は変化に富み、中でも最も有名なのが国名の由来になっているナミブ砂漠だろう。ここは世界で最も古い時代に成立した砂漠で、8000万年以上の歴史があるとされる。この周辺でしか見られない動植物も数多い。

ナミブ砂漠の美しい砂丘があまりにも有名だが、実は国土のかなりの部分をサバンナや礫砂漠が占めている。
地勢を大まかに分けると、西部の海岸沿いには南北方向に細長く伸びる砂漠地帯が広がり、有名なナミブ砂漠もここに含まれる。その東には大急崖帯と呼ばれる急峻な地形が国土を縦断しており、ここから一気に標高が上がり中央高地となる。さらに東にはボツワナまで続くカラハリ砂漠が広がる。
今回の旅行では国土をほぼ横断し、後半は北部へも足を伸ばすので、一通りの地形を見ることができそうである。そして環境が異なれば、見られる虫もおのずと違ってくるはずだ。楽しみである。


ところで、私はこれまでに一度も海外で採集をしたことがない。英語も「これはペンです」程度しか話せない。虫屋の海外調査スキルとしては、RPGで言うところのレベル1である。しかし! 言うまでもなく丸山さんは余裕でボス戦をこなせるのだ。筒井さんも白川さんも、幾度となく海外で採集している猛者である。もちろん英語も話せる。私のような海外採集未経験者にとって、これほど心強いツアーはない。とはいえ、現地で私が「これはペンです」と言う機会はあまりなさそうなので、私は英会話の本を買ってきて予習をする必要に迫られた。


場所が場所だけに、感染症対策も万全にする必要があった。A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病の予防接種である。中でも狂犬病は特に恐ろしい病気なので、絶対に受けておかねばならなかった。ものはついでだからと風疹麻疹の2種混合(MR)もやり、これで妊婦さんにも迷惑をかけない身となった。短期間にこれほど注射を打たれまくったのは初めてである。
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予防接種の履歴。

マラリア対策としては飲み薬のマラロンを処方してもらい、これで万全だぜと思っていたら、愚かにも出発直前に風邪でダウンしてしまった。張り切り過ぎた遠足前の小学生みたいである。やっと熱が下がったのは出発前日。というわけで、病みあがりでふらふらしつつアフリカへ向かうことになったのだった。大丈夫だろうか。

ナミビア旅行記(1)へ続く! (公開しました)

※丸山さんも同時に旅行記を公開しています。こちらでどうぞ!


# by isohaetori | 2019-06-29 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

クロサワツブミズムシ

クロサワツブミズムシSatonius kurosawaiはちょっと変わった昆虫である。マニアックな甲虫屋ならば一度は憧れる虫だと思う。粘食亜目Myxophagaに属する微小な水生甲虫で、今のところ日本産のツブミズムシ科甲虫としては唯一の種である。1982年に佐藤正孝博士により記載され、種小名は発見者である黒澤良彦博士に献じられている。

水生甲虫とは言っても川や湖沼にいるわけではなく、浸み出す水で常に濡れているような岩盤の表面で生活している。体長は1.5mmほどと、非常に小さい。なかなか目につかない大きさであるのは確かだが、それにしても過去の記録は少ない。水の滴る岩場なんて全国の山にありそうなものだが、どこにでもいるような虫ではないらしい。これはちょっと不思議なことで、いる場所にはなぜいるのか、いそうな場所にいないのならばその制限要因はなんなのか、いつか知りたいと思っていた。なによりゴマ粒よりも小さいというその虫自体を、野外でじかに見てみたいと思っていた。しかし、なかなかその機会には恵まれずにいた。

ところが先日、思いがけず道が開けた。いつもお世話になっている学芸員さんが生息地の調査をされたことのある方で、先日その場所について話を聞くことができたのである。しかもスマホでGoogleマップを見ながら、「ここだよ」とピンポイントで場所まで教えて頂いた。訊いてみるものである。ついにあのサトニウスに会える! 重たいカメラを担いで、先日その場所に行ってみた。

ポイントはすぐに分かった。某県某所。一見なんてことのない道路わきにある。
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たしかに教科書通りの環境である。ここは河岸段丘の中段あたりで、上のほうから水が浸み出し、岩盤表面を濡らしている。年中水が途切れることがないらしいのは、表面についたコケや有機物の溜まり具合からして分かった。
カメラを用意して、岩の表面を凝視して数十秒、目的の虫はあっけなく見つかった。まあ場所を聞いて来たのだから当然なのだが、憧れの虫を目の当たりにできたのはやはり嬉しかった。
これがクロサワツブミズムシ。(以下、いずれもトリミングなし)
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このようにびちゃびちゃに濡れている岩の表面にくっついている。常に体を水に浸した状態でいるのが好きなようだ。この日は気温も高く、ゆっくりと歩いているのも多い。

これはやらせ写真。ピンセットでつまみ上げて、濡れていない場所を歩かせてみた。短い触角が可愛い。
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よく見てみると、怪しげな平たい虫が少ないながらも見つかった。どうやらこれがクロサワツブミズムシの幼虫のようだ。これはやや小型で、若齢幼虫と思われる。
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体は非常に扁平で、ヒラタドロムシ類の幼虫を思わせる。腹部には細い突起物がずらりと並んでいて、いかにも水中の溶存酸素を取り込むのが得意そうな姿である(個人の感想です)。
この個体は少し大きい。
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撮影していると地元のおっちゃんが何人も通りかかり、そのたびに聞き取りをしたのだが、やはりこの崖は一年を通じて水が途切れることはないらしい。役所の人も通ったので訊いてみると、ここの段丘の上から岩盤の隙間を通じて地下水が浸み出てくるのだそうだ。

70代くらいのおじいちゃんの弁。
「ここは俺が子供の頃っからこんな感じだよ~。でも今日はまだ水が少ねえな、いつもはもっと流れてるんだけどな。
このあたりの岩場は昔は石切りをやっててな、こんな(手を広げる)でっかい石を背負った男が歩いてたよ。積んで塀にしたりかまどにしたりするんだな」

やはり地元民の話を聞くのは面白い。
クロサワツブミズムシにとって、この「年中途切れない水」が重要なのは分かるのだが、それにしてももっと記録があってもよさそうなものだ。生息環境の雰囲気は掴めたので、今後は似たような場所を見かけたら探してみたいと思っている。


帰宅後に調べてみると、本種の幼虫はボイテル博士が既に記載していたことを知った。PDF直リン。



# by isohaetori | 2017-02-22 12:40 | 昆虫採集・観察(陸)