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昆虫、特に甲虫を中心とした生き物ブログ。ビーチコーミングやガラスびん収集についても書いています。


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ナミビア旅行記(3) ナミブ砂漠へ

ナミビア旅行記(2)からの続きです。

1月30日(水)
今日はナミブ砂漠方面へ移動する日である。距離にして約540km、6~7時間はかかる行程だ。

ナミビアの道路地図を見ると、太い道路にはB1やC19というように、BからDまでのアルファベットがついている。Bは完全に舗装された幹線道路で、Cは未舗装の部分もある、やや注意を要する道である(四駆なら走れる)。Dは道幅の狭い完全なダートで、普通車で走るのは危険だ。
この日は大急崖帯を抜けるCルートを走る必要があった。中央高地から海岸沿いの低地へと下る山道だが、タイヤは悪路用の丈夫なものだし、丸山さんの手慣れた運転のため安心していられた。そして次々と現れる雄大な景観には飽きることがない。
山道を抜け、平坦な大地に出た。
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シャカイハタオリ Philetairus sociusの巨大な巣があった。
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この巣は多数のつがいが住むマンションのようなものである。人の背丈と比べてみると、その大きさが分かると思う。
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シャカイハタオリは、シルエットも大きさもスズメによく似ている(スズメも同じハタオリドリ科に属する)。嘴は銀色。この小さな鳥が、これほど巨大な巣を作り上げるとは驚きだ。

筒井さんのジャンプ、100点!
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巨大なユーフォルビアと丸山さん。

ときどき車を停めては写真を撮っていたので、目的地に着いたのは夜の7時近かった。キャンプ場は営業時間を過ぎていたが、なんとか受付をしてもらえた。一人210ナミビアドルで、温水シャワー、トイレつき。
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(筒井さん撮影)
せっかく買ったガスコンロは不良品で使えなかった! これには困ってしまった。急きょ木炭を買って火を起こすが、全然火力が足りず、生煮えのパスタを食べる羽目に。


暗くなってから見回りをする。なんと、Epiphysaという砲丸のようなゴミムシダマシが見つかった。この近辺で得られたという標本を過去に見たことがあり、ここに来たら絶対に見たいと思っていた虫である。嬉しい。しかしこれ以外はほとんど虫がいない。
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前髪のような金色の毛がある。まんまるで艶消しの体がとてもカッコいい。和名はないので、「ホウガンゴミムシダマシ」と勝手に呼んでいる。
(追記: 今度出る本『とんでもない甲虫』で、丸山さんは本種に『マエガミパッツンゴミムシダマシ』と命名した)

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可愛い砂漠のヤモリ、Ptenopus sp.がいた。

あずまやのコンセントから電気をとり、ライトを点灯して虫の飛来を待つことにした。驚いたことに、夜になって間もなく、ライオンコガネが一頭飛んできた。
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昨日見た種とは異なり、毛は白く、より密なタイプである。モコモコでとても可愛い。

明日は砂丘へ行くので、早めにテントを張って寝てしまうことにした。野良猫が頻々と現れて、荷物を漁ろうとするので追い返すのに苦労する。セグロジャッカルがテントのすぐそばまでやってきたのには驚いた。野生動物を間近で見られるのは嬉しい反面、狂犬病の怖さもあり、過度の接近遭遇は絶対に避けたいところ。



1月31日(木)
夜のうちにジャッカルがいたずらしたようで、外に置いていた丸山さんの吸虫管が破壊されていた! あちこち探した結果、テントからだいぶ離れたところで発見された。

キャンプ場周辺で見られた、トゲトゲの実をつけるマメ科の植物。Caesalpinia pearsoniiと思われる。実の直径は一円玉くらい。
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砂丘へ向かう途中、道端で出会ったオリックス。こんな野生動物がそこらへんを歩いているとは。
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そしていよいよ、この旅の大きな目的のひとつであるナミブ砂漠へ。
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言葉を失う絶景である。空が青い。何かの錯覚かと思えるほど、とてつもなく青い。真っ赤な砂と真っ青な空の対比が強烈で、よくできたコラージュようだ。砂丘の砂はさらさらで、足が沈み込むので登るのに苦労する。私は脳内がお花畑状態だったので、ほとんど写真を撮っていなかった。以下は筒井さん撮影。
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やや息が上がっているおじさん三人組。私は左足が斜面に沈んでいくのをこらえるのに必死で、妙な姿勢になっている。

子供の頃から憧れていた、あのナミブ砂漠に立っているという実感がどっと押し寄せてくる。しかし押し寄せすぎて、この状況に気持ちの整理が追いつかない。なんなんだこの凄い光景は。
圧倒的な景観に語彙は完全に失われ、「すごい、すごい」しか言うことができなくなった。この感動を伝えるには一体何を使えばよいのか。私のカメラではあまりにも無力なのは確かだ。

砂丘の斜面を高速で走るゴミムシダマシがいた。丸山さんが走って追いかける。その様子は筒井さんが最高な写真に収めてくれて、今回の旅のハイライトとなった。それについては丸山さんの記事をどうぞ。

着いたのがお昼前だったこともあり、砂丘はすでに灼熱だった。湿度が低いので体感温度はそれほどでもないが、40度以上はありそうだ。汗はかいたそばから蒸発してしまうので、服が汗びっしょりになるということがなく不思議な感じがする。また、暑さのせいか虫が非常に少ない。

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良い笑顔の丸山さん。砂漠のドライブは楽しい。


圧倒的な充実感を得て砂丘を後にし、昨夜とは別のキャンプ場へ。テント泊もなかなか良いものである。
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メスを追いかけて走るゴミムシダマシ。これこれ! これを見たかったのだ。


しかしこの日は電気が来ておらず、シャワーも使えず、夜間はゲートを閉めてしまうので車も出せないということが夜になってから判明した。仕方がないのでヘッドランプの明かりで敷地内を見回ることにする。

初見の毛深いトックトッキーがいた。
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刺されたらやばそうなサソリ。
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可愛いヤモリ。
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立ち枯れ木の見回りで、カッコいいウスバカミキリの一種も見つけた。大きさにはかなりの個体差がある。アフリカらしい、とても良い虫である。

最後にダメでもともとという気持ちで、筒井さんが携帯式のUVライトを点灯。最後の最後にライオンコガネが飛んできた。昨日見たのと同じ、もふ度の高いタイプである。よかったよかった。

ナミビア旅行記(4) に続く。(公開済みです)

丸山さんも旅行記を同時公開中! こちらからどうぞ。


# by isohaetori | 2019-07-06 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(2) サバンナで虫探し

ナミビア旅行記(1)からの続きです。


2019年1月26日(土)

今日から本格的な虫探しが始まる。

まずは自炊用のガスコンロを求めて市内の店を回ったあと、東の町ゴバビスへと向かう。道はきちんと舗装されており、道幅は広くないものの運転しやすい。

時々車を降り、石を起こしたりアカシアの林を眺めたりして、軽く虫を探しながら移動する。

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さて、アフリカと言えばゴミムシダマシ、ゴミムシダマシと言えばアフリカである。道路わきの石起こしで、こんな面白い姿のやつを発見した。Eurychoraという属だろう。蝋のような分泌物を出し、背面に砂やゴミをたくさん付着させている。ゴミダマオタクとしては、ぜひ見てみたかった種だ。

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アカシアの茂みを歩いていると、ブーンという力強い羽音とともにフトタマムシが飛んだ。Sternocera orissaだ! 夢中で追いかけた。

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感動に打ち震える。私はフトタマムシが大好きなのだ。まさかこの目で生きたフトタマを見る日が来るとは…。感無量である。このオリッサは線路沿いのアカシア林にたくさんいると判明した。これぞアフリカという雰囲気である。


ゴバビスに到着し、まずは燃料補給をする。ガソリンがとても高い。我々の車はディーゼルだが、リッターあたり100円以上する。それに燃費が悪いのでどんどんなくなる。車には燃料タンクが二つあり、合計140リットル入るが、残りが半分になる前に給油した方が良さそうだ。何しろ町と町の間の距離が長いので、ガス欠を起こすとたいへん面倒なことになるのである。



ロッジに向かう途中、第一キリンに遭遇。

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これから3泊するロッジ。キッチンと調理道具一式がついており、毎日自炊することになる。周囲は典型的なサバンナである。

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マカロニとソーセージで腹ごしらえを済ませ、夕方から敷地内を歩き回って虫を探す。薄暗くなると、地中に潜んでいた虫たちがぽつぽつと地表に現れはじめる。

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一番多かったゴミダマ、Psammodes vialis。この仲間はアフリカではトックトッキー(Tok-tokkies)という愛称で呼ばれている。オスは腹を地面に打ちつけて音を出し、仲間と交信する。この虫はロッジに拉致してきて、しばらくの間飼育してみた。飛んで逃げる心配がないので、プラスチックのどんぶりが飼育容器だ。たまに腹をこつこつと鳴らすのが面白い。そして大食漢である。水をあげるとごくごく飲み、パンをあげるとびっくりするほどよく食べる。ペット昆虫として優秀だが持ち帰ることはできず、日本では飼えないのが残念だ。


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カッコいいアンティア(オサモドキゴミムシ)の一種。日本のオサムシより一回り以上大きく、発達した大顎と相まってすごい迫力だ。



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ド派手なバッタ。いかにも毒をもっていそうな色合いである。


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糞玉を転がすスカラベも見た。糞虫も大好きなので、感激もひとしお。


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宿のテラスに水銀灯をぶら下げ、虫を呼ぶ。


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アリノスハナムグリの一種が来た!



文献によると、マンティコラは降雨の後に現れるという。ここ数日は雨が降っていなさそうだし、実際どこもかしこもカラカラである。

結局10時過ぎまでサバンナをうろつき、もろもろ片づけて寝たのは12時くらい。それなりに粘ったものの、結局マンティコラには出会えなかった。しかし初めてのアフリカとあって、見る虫すべてに興奮しっぱなしだった。体力が無限にあるなら一晩中歩きたいものだ。



1月27日(日)

この時期のナミビアは雨季の真っ只中である。

雨季というと雨がしじゅう降ってばかりの天気を想像されるかもしれないが、実際はそうでもない。ナミビアの雨季は、数時間大雨の降る日が時々あり、あとは晴れているというのが普通らしい。そしてまとまった雨の後は虫が急に活動的になる。マンティコラが出てくるのもそんな時、それも夜間だという。そのため、我々は雨を待ち望んでいるわけである。


さて、朝の涼しいうちにロッジの周りを散歩する。我々の泊まっている棟のすぐ裏手に、こんな可愛らしいリクガメがいた。はじめは石か何かかと思った。

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ノコヘリヤブガメというらしい。可愛い。飼いたい。もちろん連れて帰るわけにはいかないが。


アカシアには大きくて派手なゲンセイがいた。時おり大きな羽音をたてて飛んでいる。飛んでいるときは腹部の赤い紋が見えて美しい。

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敷地内にもいたオリッサ。

しかし、暑い日中はあまり虫が活動しておらず、目につくものはそれほど多くない。


夜はソーセージを焼き、パスタとともに食べた。

ソーセージはスーパーで生のものを売っており、血も混ぜてあるのか実に美味しい。種類も豊富である。日本で食べるソーセージよりも脂は少なめで、噛むほどに肉そのものの味が楽しめる。これには感激した。ナミビアはかつてドイツ領だった事情があるためか、ビールもソーセージも美味しいのが素晴らしい。

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丸山シェフ。



夜はサバンナの中をうろつき、アンティアを探した。彼らはブッシュの近くによくいる。種によって大きさや模様もさまざまで、眺めていてとても楽しい。

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よく見ると、そこそこの確率でツチハンミョウの幼虫がついている。ツチハンミョウは寄生性の昆虫で、孵化した幼虫はホストを目指し、動く虫になら手当たり次第に便乗しようとする。しかし目的の虫に辿りつける個体はごくわずかでしかない。上のアンティアも鞘翅に一匹幼虫を乗せているが、この時点で幼虫の運命は決まってしまったと言える。


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アンティアは驚くと怪しい液体を噴射してくる。この液体が強烈で、臭い上に皮膚につくと火傷をしたようになる。触るときには必ず手袋をしていたのだが、液が浸みこんできた部分は皮膚がただれて剥けてしまった。また、この防御液はかなりの勢いで噴射されることがあり、まともに顔に浴びてしまった時はかなり焦った。眼鏡をかけていたので事なきを得たが、目に入っていたらひどいことになっていただろう。

結局、今日も雨は降らなかった。しかし天気予報によると、明日は雷雨があるとのことで、期待がもてる。



1月28日(月)

朝から快晴。風が強い。暑い日中に歩いたがあまり得るものがなく、夜に備えてロッジでだらだらすることに。

筒井さんはドローンを持ってきており、飛ばしてみせてくれた。

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こういう写真が撮れる! すごい。



夕方から街に出て買い物。ビール、ソーセージ、ツルハシなどを買い込んだ。

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ロッジに帰るころには稲光とともにポツリポツリと雨が降り出し、待ちに待った夕立となった。地面が濡れたことで、夜のサバンナに明らかな変化が起きた。どこに隠れていたのかと思えるほど、たくさんのトックトッキーが地表に現れた。筒井さんが巨大で恐ろしげな姿のコオロギを発見したが、こいつを見たのは雨上がりのこの時だけであった。

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今夜は少し離れた池の跡地に向かうことにした。

時おり立ちはだかる動物よけのフェンスをまたぐ必要があったのだが、これには電気が通っていることがじきに判明した。ときどき通電されてビリッとくるのである。大仁田厚には効かないかもしれないが、それでも痛いものは痛い。丸山さんは手袋をしていなかったので辛い思いをしたようだ。私はゴム張りの軍手をしていたのでダメージは少なかったが、うっかり針金に触れた足がしびれて悲鳴をあげてしまった。良い子は真似をしないように。


ここもアンティアの多様性が高く面白い。初見の種が次々に現れてやみつきになる。3人で適度な距離を保ちつつ、めいめいヘッドランプで周囲を照らしながら歩き回った。

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その時である。丸山さんが闇の中から血相を変えて走ってきた。緊張が走る。

「どうしました!?」

「馬! 馬が追いかけてくる!!」

そう叫びながら、丸山さんはすごいスピードで走り去っていった。馬から逃げていたのだった。でかい馬がいななきながら突進してくるのはかなり怖く、実際危険である。後で私も同じ目に遭い、肝をつぶした。

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(ちょっと前に流行ったアプリで作成)

幸い丸山さんが馬に蹴飛ばされることはなかったが、逃げる途中でスマホを失くしてしまったという。走っている時にポケットから落ちたに違いない。皆で現場に戻って探しまわり、なんとか回収。見つかって本当によかった。



気を取り直し、闇に潜む動物の気配に注意しつつ、ヘッドランプの明かりで虫を探し続ける。

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巨大なヤスデがたくさんいた。恐ろしげな見た目だが、取りたてて危険なところはない平和な生きものである。葉っぱをもぐもぐと食べる様子が可愛い。


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ヒヨケムシの一種。猛烈なスピードで地表を走り回る。もうめちゃくちゃにカッコいい。


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美しいヒキガエル。


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大きなサソリ。尾が太く、この類は総じて毒性が強い。驚いたことに、このサソリは尾をじゃらじゃらと鳴らして威嚇してきた。まるでガラガラヘビのようだ。


サバンナの恐ろしいところは、方角が分からなくなることだった。まっすぐ歩いているつもりでも、知らず知らずのうちに同じところをぐるぐると回ってしまっており、少し前に通った場所に出て愕然とするのだ。これには実際ぞっとした。風景が単調で、明かりや目印になるものが何もないからである。今回は全員がmaps.meという地図アプリを使っていたので完全に迷うことはなかったが、GPSなしに夜のサバンナに入ってはならないと学んだ。


宿に帰ってきた時点で1時になっていた。筒井さんのアプリによると、12kmほど歩いたようだ。風が強く、ライトにはあまり虫が来ていない。その後軽く飲み、3時には皆寝たが、私はライトの前に残ってしつこく待った。

Gynanisa majaという、美しい目玉模様のヤママユが飛んできた。

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そしてついに、皆が寝静まった後、ライオンコガネとヒゲブトオサムシが飛来した。

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もふもふだー!! 一人で歓声をあげた。



1月29日(火)

朝は寝坊を決め込み、午後まで昼寝や日記書きをしてだらだらと過ごす。日中はあまり昆虫が活動していないため、暑い中頑張るよりも、夜に備えて体力を蓄えておいた方がよさそうだ。


好白蟻性の昆虫を調べるべくシロアリ塚に挑んだが、収穫はまったくなかった。シロアリすら出なかった。塚はガチガチに堅く、これを突き崩すのはかなりしんどい。そもそもツルハシが相当に重く、箸より重い物を持てない身としてはすごい苦行である。

この後の筋肉痛はひどかった。次は現地の屈強な男を雇おうということで、全員の意見が一致した。



地面をよく見てみると、明らかに怪しい穴がいくつも空いている。大きくきれいな円形で、周りに土盛りはない。ハンミョウの巣穴の特徴である。これは絶対にマンティコラの巣穴だろうと推測し、発掘にかかる。

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そして出た!

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マンティコラの幼虫を発見!

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すごい顔をしている。ある意味、成虫よりも貴重かもしれない。筒井さんも近くで一頭掘り出した。

周辺をよく探すと、他にもいくつか小さな巣穴があった。さまざまな齢期の幼虫が混在しているようだ。餌資源も不安定だろうし、成虫になるまでにはかなりの期間を要すると思われる。



夜は例によってロッジの周辺を散策した。これは小さな石ころのようなゴミムシダマシ。とても可愛いが、この一個体しか見つからなかった。

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22時30分に宿に帰ったが、ライトには全然虫がきていなかった。そして今夜もマンティコラの姿は拝めなかった。彼らが活動するには雨が足りないのだろうか。

ライトトラップもいまいちかと思いきや、まだ暗い5時過ぎにそっと起きだしてみて驚いた。ライオンコガネが次々に飛来するのだ。彼らはどうやら明け方に飛ぶらしい。あのもふもふは気温の低い時間帯に適応しているためかもしれない(後で調べてみると、過去にそういう研究もされていた)。しかし、よく見ると毛が擦れてハゲているものや、前脚が摩耗している個体が多かった。発生末期のようだ。


6時20分、明るくなったのでロッジに戻って二度寝。


ナミビア旅行記(3)へ続く。


丸山さんも旅行記を同時公開中です。こちらからお読みください。



# by isohaetori | 2019-07-03 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記(1) 出発~最初の夜(2019/01/24~1/25)

前口上』からの続きです。

さて、私は海外旅行ド素人で乗り継ぎが不安だったのと、みんなと一緒に行った方が楽しかろうと思ったため、まずは福岡空港へと飛んだ。博多に出て乾燥ワカメ(重要)を含めた最後の買い出しをしたのち、丸山さん、筒井さんと空港で合流した。晴れてパーティー結成である。

筒井さんは丸山さんと親しい虫屋さんで、海外経験も豊富なナイスガイだ。私は初対面だったが、虫という共通言語があるのですぐに打ち解け、マンティコラに関する話で盛り上がった。マンティコラ(Manticora:エンマハンミョウ属)はアフリカにしかいない巨大なハンミョウで、凶悪なまでに発達した大顎を備えた甲虫だ。甲虫屋なら誰もが憧れるカッコいい虫である。
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これは前から持っていたマンティコラの標本。(イメージです)


いよいよ出発である。
今回は福岡→香港→ヨハネスブルグ→ナミビアの首都ウィントフックへと飛び、ほぼ丸一日を移動に費やした。ヨハネスブルグ行きの便では、丸太のような二の腕をした筋骨隆々の男と隣り合わせになってしまい、エコノミークラスの席がさらに辛いものとなった。

ようやくたどり着いたウィントフックのホセア・クタコ国際空港。意外に暑くはない。
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タマネギ頭のおばあちゃんが気になる…

両替をし、地元の大手キャリアMTCでSIMカードをスマホにセットしてもらう。15GBのプランでだいたい1万円くらい。
携帯電話が使えるようになったところでレンタカー屋に行き、車を借りた。ナミビアのレンタカー事情はあまり良くなく、トラブルも多いようだが、筒井さんの手腕により良い車を押さえることができた。
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借りたのはピックアップの真新しいハイラックスである。車体は大きく、悪路用の丈夫なタイヤを履いており、大変心強い。しかも荷台には冷蔵庫が装備されている。こんなものがあったらサバンナで冷たいビールを飲めてしまうではないか! いやー困ったなー。

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左が丸山さん、右が筒井さん。スーパーへ行き、水やパスタ、インスタントラーメンなどを買いこむ。節約のため、ロッジでは基本的に自炊だからだ。現地調達するつもりだったガスコンロこそなかったが、首都ウィントフックではたいていのものは揃うと分かった。

すでに夕方なので、最初のロッジへ。アフリカらしい良い雰囲気で、気分が盛り上がる。敷地内ではダチョウが飼われていた。
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3週間分なので、かなりの大荷物。

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無事に旅が始まったことを祝してビールで乾杯し、食事もそこそこに探索を開始した。ナミビアは私有地が多く、好き勝手にどこにでも入れるわけではないので、まずは地主の許可を取ってから歩き回る。
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白黒のめちゃくちゃにカッコいいゾウムシが現れた! ナミビアの虫とのファーストコンタクトがこいつで、もう鼻血が出そうである。
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このほかにはアリバチ、ゴミムシダマシ数種、糞虫などが見つかった。どれもがアフリカらしい虫で実に楽しい。虫好きには天国のような場所である。Heniochaという美しいヤママユもいて感激した。
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長時間の移動で疲れ果てたので、日付が変わる前には就寝することにした。しかしベッドにアリの行列が上がってきて、体中をちくちく刺すので眠れない。「これがアフリカの日常というやつか…」と妙に感心したが、眠れないのは困る。仕方なくロフトに上がり、埃っぽい予備のベッドで眠りについた。


丸山さんもナミビア旅行記を同時公開中!こちらからどうぞ。

# by isohaetori | 2019-06-29 06:01 | 昆虫採集・観察(陸)

ナミビア旅行記 前口上

今年の1月から2月にかけ、三週間ほどナミビアへ行ってきた。来る日も来る日も虫を追いかけ、よく笑い、そして長距離ドライブに明け暮れた三週間だった。ここでは虫屋ブログらしく、現地の生きものの写真を中心として、楽しかった旅の記録をつけてみたい。


ことの発端は、虫屋仲間のおじさんたちで集まって飲んだときのことである。昨年(2018年)のはじめごろだったと思う。
その席には九州大学総合研究博物館の丸山宗利さんが来ていて、そこで海外調査の話題が出たのだった。言うまでもなく、丸山さんは数えきれないほどの渡航歴があり、多数の新種を発見されている方である。


丸「近いうちにナミビアへ行きたいと思ってるんだよね」
私「えっナミビア! いいですよねー私も昔から憧れてるんすよ。砂漠の虫が大好きで」
丸「だよねー。じゃあ一緒に行く?」
私「!?!?!? ええっいいんですか!? 行きます行きます! 絶対行きます!!」
まさかの急展開に混乱しつつも、一も二もなく飛びついた。


私は幼いころから外国の、とりわけ砂漠の生き物に憧れていた。逆立ちして霧から水を集めるゴミムシダマシや、熱い砂の上で交互に足を上げ下げするトカゲの映像などは、テレビの生き物番組で何度も観たものだ。そのため彼らがナミブ砂漠という場所にいることは知っていたが、子供がおいそれと行けるような場所ではなく、それは完全に遠い世界の話であった。

その後、虫屋となってからも砂漠への憧れは相変わらず募り、そのあまりにアフリカのゴミムシダマシやフトタマムシを蒐集するようになった。そしてかっこいいゴミダマの標本を眺めては、まだ見ぬアフリカの地に思いを馳せるのだった。そこにきて、ナミビア行かない? というお誘いである。来た、ついに夢が叶う時が来たと思った。酔っぱらった私は帰宅後、へんな叫び声をあげながら床をゴロゴロと転げまわった。
「うおー行くぞ! ナミビア! ナミブ砂漠!!」


ナミビア行きの具体的な話し合いは、昨年秋ごろから始まった。
期間は3週間で、メンバーは合計4人。3週間フルに動くのは丸山さんと私で、前半には丸山さんと親しい虫屋の筒井さんが入り、後半には筒井さんと入れ替わる形で、白川さんという方が入ることになった。現地で頑丈な四駆を借り、ロッジに泊まったりキャンプしたりしつつ、常時3人のメンバーで各地の自然を見て回る計画である。

出発の何か月も前から、メンバー4人のグループトークで毎日打ち合わせをした。今回の旅の主な目的は、砂漠のゴミムシダマシ、マンティコラ(エンマハンミョウ)、ライオンコガネなどである。そこで過去の出版物や、手元にある標本のデータラベルを片端からチェックした(標本のラベルには、その虫が得られた場所と日付が書かれているのだ)。同時に海外の研究者や標本商など、さまざまな筋からの情報提供を受けつつ、できるだけ多種多様な虫を見られるよう検討が重ねられた。装備のチェックも厳しく行い、「乾燥ワカメはインスタントラーメンに入れると豊かな気持ちになるので、絶対に忘れないように」といった注意喚起も繰り返しなされた。


ナミビア旅行記 前口上_f0205097_17503757.jpgさて、ナミビアという国に関して、ここで簡単に説明しておきたい。
ナミビアはアフリカ大陸の南西部に位置する。面積は82万4290平方キロメートル(地図の赤い部分)で、これは日本のおよそ2.2倍にあたる広大な国だ。しかし面積のわりに人口は少なく、2017年の時点で約253万人。公用語は英語である。

地形は変化に富み、中でも最も有名なのが国名の由来になっているナミブ砂漠だろう。ここは世界で最も古い時代に成立した砂漠で、8000万年以上の歴史があるとされる。この周辺でしか見られない動植物も数多い。

ナミブ砂漠の美しい砂丘があまりにも有名だが、実は国土のかなりの部分をサバンナや礫砂漠が占めている。
地勢を大まかに分けると、西部の海岸沿いには南北方向に細長く伸びる砂漠地帯が広がり、有名なナミブ砂漠もここに含まれる。その東には大急崖帯と呼ばれる急峻な地形が国土を縦断しており、ここから一気に標高が上がり中央高地となる。さらに東にはボツワナまで続くカラハリ砂漠が広がる。
今回の旅行では国土をほぼ横断し、後半は北部へも足を伸ばすので、一通りの地形を見ることができそうである。そして環境が異なれば、見られる虫もおのずと違ってくるはずだ。楽しみである。


ところで、私はこれまでに一度もこうした海外旅行をしたことがない。英語も「これはペンです」程度しか話せない。虫屋の海外調査スキルとしては、RPGで言うところのレベル1である。しかし! 言うまでもなく丸山さんは余裕でボス戦をこなせるのだ。筒井さんも白川さんも海外経験豊富で、もちろん英語も話せる。私のようなヒヨッコにとってこれほど心強いツアーはない。とはいえ、現地で私が「これはペンです」と言う機会はあまりなさそうなので、私は英会話の本を買ってきて予習をする必要に迫られた。


場所が場所だけに、感染症対策も万全にする必要があった。A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病の予防接種である。中でも狂犬病は特に恐ろしい病気なので、絶対に受けておかねばならなかった。ものはついでだからと風疹麻疹の2種混合(MR)もやり、これで妊婦さんにも迷惑をかけない身となった。短期間にこれほど注射を打たれまくったのは初めてである。
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予防接種の履歴。

マラリア対策としては飲み薬のマラロンを処方してもらい、これで万全だぜと思っていたら、愚かにも出発直前に風邪でダウンしてしまった。張り切り過ぎた遠足前の小学生みたいである。やっと熱が下がったのは出発前日。というわけで、病みあがりでふらふらしつつアフリカへ向かうことになったのだった。大丈夫だろうか。

ナミビア旅行記(1)へ続く! (公開しました)

※丸山さんも同時に旅行記を公開しています。こちらでどうぞ!


# by isohaetori | 2019-06-29 06:00 | 昆虫採集・観察(陸)

クロサワツブミズムシ

クロサワツブミズムシSatonius kurosawaiはちょっと変わった昆虫である。マニアックな甲虫屋ならば一度は憧れる虫だと思う。粘食亜目Myxophagaに属する微小な水生甲虫で、今のところ日本産のツブミズムシ科甲虫としては唯一の種である。1982年に佐藤正孝博士により記載され、種小名は発見者である黒澤良彦博士に献じられている。

水生甲虫とは言っても川や湖沼にいるわけではなく、浸み出す水で常に濡れているような岩盤の表面で生活している。体長は1.5mmほどと、非常に小さい。なかなか目につかない大きさであるのは確かだが、それにしても過去の記録は少ない。水の滴る岩場なんて全国の山にありそうなものだが、どこにでもいるような虫ではないらしい。これはちょっと不思議なことで、いる場所にはなぜいるのか、いそうな場所にいないのならばその制限要因はなんなのか、いつか知りたいと思っていた。なによりゴマ粒よりも小さいというその虫自体を、野外でじかに見てみたいと思っていた。しかし、なかなかその機会には恵まれずにいた。

ところが先日、思いがけず道が開けた。いつもお世話になっている学芸員さんが生息地の調査をされたことのある方で、先日その場所について話を聞くことができたのである。しかもスマホでGoogleマップを見ながら、「ここだよ」とピンポイントで場所まで教えて頂いた。訊いてみるものである。ついにあのサトニウスに会える! 重たいカメラを担いで、先日その場所に行ってみた。

ポイントはすぐに分かった。某県某所。一見なんてことのない道路わきにある。
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たしかに教科書通りの環境である。ここは河岸段丘の中段あたりで、上のほうから水が浸み出し、岩盤表面を濡らしている。年中水が途切れることがないらしいのは、表面についたコケや有機物の溜まり具合からして分かった。
カメラを用意して、岩の表面を凝視して数十秒、目的の虫はあっけなく見つかった。まあ場所を聞いて来たのだから当然なのだが、憧れの虫を目の当たりにできたのはやはり嬉しかった。
これがクロサワツブミズムシ。(以下、いずれもトリミングなし)
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このようにびちゃびちゃに濡れている岩の表面にくっついている。常に体を水に浸した状態でいるのが好きなようだ。この日は気温も高く、ゆっくりと歩いているのも多い。

これはやらせ写真。ピンセットでつまみ上げて、濡れていない場所を歩かせてみた。短い触角が可愛い。
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よく見てみると、怪しげな平たい虫が少ないながらも見つかった。どうやらこれがクロサワツブミズムシの幼虫のようだ。これはやや小型で、若齢幼虫と思われる。
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体は非常に扁平で、ヒラタドロムシ類の幼虫を思わせる。腹部には細い突起物がずらりと並んでいて、いかにも水中の溶存酸素を取り込むのが得意そうな姿である(個人の感想です)。
この個体は少し大きい。
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撮影していると地元のおっちゃんが何人も通りかかり、そのたびに聞き取りをしたのだが、やはりこの崖は一年を通じて水が途切れることはないらしい。役所の人も通ったので訊いてみると、ここの段丘の上から岩盤の隙間を通じて地下水が浸み出てくるのだそうだ。

70代くらいのおじいちゃんの弁。
「ここは俺が子供の頃っからこんな感じだよ~。でも今日はまだ水が少ねえな、いつもはもっと流れてるんだけどな。
このあたりの岩場は昔は石切りをやっててな、こんな(手を広げる)でっかい石を背負った男が歩いてたよ。積んで塀にしたりかまどにしたりするんだな」

やはり地元民の話を聞くのは面白い。
クロサワツブミズムシにとって、この「年中途切れない水」が重要なのは分かるのだが、それにしてももっと記録があってもよさそうなものだ。生息環境の雰囲気は掴めたので、今後は似たような場所を見かけたら探してみたいと思っている。


帰宅後に調べてみると、本種の幼虫はボイテル博士が既に記載していたことを知った。PDF直リン。



# by isohaetori | 2017-02-22 12:40 | 昆虫採集・観察(陸)